実録!理学療法士が病院内の腰痛予防活動をやってみた!10カ月間の活動報告

健康寿命 院内 腰痛予防

これまで腰痛予防に関する記事をアップしてきましたが、今回は腰痛予防活動を実際に職場で実践したらどうなるのか?ということを、ほぼ体験談をもとにお伝えしたいと思います。

実際の活動期間は5カ月間でしたが、最初の構想からはじまり、事前準備を含めると10カ月ほどかけて行いました。

途中で予期せぬトラブルやプロジェクトの軌道修正があり、なかなか思うようにいかないことも多かったのですが、これから同じようなことをやってみたい!と思っている方に向けて、少しでも何かの参考になればと思います。

活動を始めようと思ったきっかけ

そもそもの出発点は、私が都道府県士会の事業に携わっていた所から始まります。

都道府県士会では、一般の方や介護事業所のスタッフなどを対象に、毎年テーマを決めて市民講座を開催しているのですが、ある年、私が「腰痛予防について」というテーマで講演させて頂いたことがこの活動に大きく影響しています。


そして腰痛予防に関して興味を持つようになり、様々な文献を読んでいく中で、「産業分野での腰痛予防」というテーマを知ります。いわゆる産業理学療法の分野の話になります。


当院では医師が産業医として企業健診に出向いていることもあり、比較的簡単に企業に対する腰痛予防活動が始められるかもしれないと思いました。


しかしそこで思ったのは、あまりノウハウもない自分がいきなり飛び込んで、果たしてうまくいくのだろうか?ある程度、実績を積んでデータとして提示できるものがないと信用してもらえないのではないか?ということでした。


加えて産業医の管理をしている健診部との調整もなかなかうまくいかない状況だったので、「まずは身近な所からはじめてみて、そこから活動範囲を広げていこう!」と考えました。


こうして10カ月にわたる、院内での腰痛予防活動プロジェクトが始動することになりました。ここまでは自分一人で盛り上がっていた時期なので、早速協力してもらえるメンバーの募集を開始しました。

メンバー集め(活動開始6カ月前)

活動に協力してもらうメンバーは、リハビリ科スタッフの中から募集しました。
予想としては5~6名程度集まればいいかなと思っていましたが、予想に反して15名弱のスタッフが名乗りを上げてくれました。

当初の予定は、腰痛予防教室を開催してその効果判定を行う程度の規模で考えていたのですが、メンバーが集まったのでもう少し活動の幅を広げることにしました。

そこでとりあえず最初に、自分の考えをメンバーに知ってもらうために、ミーティングを開催する必要がありました。

キックオフミーティング(活動開始5カ月前)

コンセプトを伝える


最初のキックオフミーティングでは、活動を行う理由と、コンセプトを伝えることを第一に意識しました。


具体的なコンセプトとしては「腰痛予防において、集団を対象に、シンプルな方法でいかに効果を出すか」というものでした。


最終的には企業内で腰痛をはじめとするヘルスケアの部分で活動できることが理想であるため、普段の診療の延長線上にあるような個別的な対応は難しいと考えたからです。


そしてそのためには、実施するエクササイズを継続してもらえる仕掛けづくりが必要で、活動に関する基本的な知識や情報を集めることの重要性を話しました。


まずは自主的に情報収集をして、ミーティングの中でアイデアをどんどん出して欲しいという私の意向を伝えました。

サイボウズの利用

また、通常の診療業務の合間を使ってプロジェクトを進めていくので、情報共有や意見交換に余計な時間を費やさないことがとても重要になってきます。

ましてや、15名の人数ともなると簡単には集まりにくいため、WEB経由で情報共有などが出来るシステムである「サイボウズ」というグループウェアを利用することにして、スタッフ全員に登録してもらうことを依頼しました。

最初の壁

キックオフミーティングから1カ月ほど経ち、メンバーのアイデアを吸い上げるために再びミーティングを行いました。

しかし残念ながら、コンセプトとは合致しない意見やアイデアが出てきました。(個別的な対応を重視したアイデアが多かった)私の説明不足が招いた結果だと思っています。

出てきた意見やアイデアの数も少なかったため、プロジェクトチームの中でも取り組む姿勢というか、熱意のようなものに差があることを感じました。(当然なんですけどね…何かを組織した時は、必ずこうした状況になります)

アイデアを出し合って、方針を決めるという最初の段階からつまづいてしまったので、どうしようかと一番頭を悩ませた時期だったことを思い出します。

トップダウン的に

アイデアの集約が思うようにいきませんでしたが、この時点でまだ活動開始予定まで4カ月ぐらいありましたので、まだ修正はできると思い、何とかメンバーに理解してもらえるような方向性を打ち出す必要がありました。

そこでサイボウズ上で、再度コンセプトを伝え、コンセプトに沿った今後の方向性をなるべく丁寧に語りました。

しかし、これからまた意見を集約して決め事をしていくとなると、途方もない時間がかかってしまいます。

そこでここはトップダウン的に「メンバーを活動内容ごとに班分けをして、その活動内容もある程度具体的なものを自分の方から示す」ということを思い切って行いました。メンバーの人数は十分でしたので、頭の中にあった構想をもとに班分けしました。以下が班分けと示した活動指針の詳細です。

評価班

・シンプルな内容で腰痛軽減の効果判定に寄与する評価方法を考える。
・仮に職員に集まってもらい個別評価を行うにしても、誰にでも評価できて、
1人5分以内で終わるような評価内容になるようする。
(どこで、いつ、どのようにやるか)
・痛みに関するアンケートをつくる
腰痛の有無・腰痛の客観的な評価尺度・腰痛に対するメンタルの評価を入れる。

エクササイズ班

・シンプルで効果があり、継続可能な腰痛体操プログラムを作成する。
・場所をとらずできるもの、種目は多くても3種目ぐらいが限界か。
・個別性を考慮しないでも構わない。
体操のデモ動画の作成・配布ができると理想的。
・腰痛体操教室の開催(月1回)
月1回・定期的に腰痛を抱えるスタッフに集まってもらって腰痛体操を行う。
(いつ、どこで、どのようにやるか)参加しやすい環境づくりがポイントになる。

介助技法班

・腰痛にならない介助方法教室の開催(月1回)
月1回・定期的に腰痛予防のための介助技法を伝えられる場を作る。
(どこで、いつ、どのようにやるか)参加しやすい環境づくりがポイントになる。
第1回は寝返り・起き上がりの介助、第2回は立ち上がりの介助、最後は疾患別の応用編などとシリーズ化できるとおもしろい。介助している所のデモ動画の作成・配布などもできると理想的。

広報・院内ラウンド班

・広報活動
本活動の目的・内容・今後の活動予定・活動報告・腰痛予防コラムなどスタッフ
に周知できるような掲示物を作成する。リーフレットも作る。
(最低月1回の発行を目指す。)
院内のグループウェアの活用や全体朝礼資料に載せてもらうなど、できるだけ多
くのアイデアを絞り出して、様々な手段を用いて活動の宣伝をする計画を練る。
・介護現場の作業環境チェックする
実際に介護を行っている現場をみて、身体的な負担が大きい場面や環境をチェッ
ク・評価して現場責任者に伝える。広報活動とリンクさせてもよい。

以上のように、班分けと活動指針を示すことによって、メンバーが目標をもって動き出せるように促しました。

この後は、各班の中でリーダーが中心となって活動内容をブラッシュアップしてもらいました。活動内容が具体化し、実行に移せる段階までにここから2カ月ほどかけています。


その間にリーダーミーティングを開催し、各班のアイデアや活動内容を把握して、各班同士の連携や活動内容の微調整を行っています。


また院内で活動するにあたり病院上層部の許可も事前にもらい、準備を着々と進めていきました。

院内勉強会開催とアンケート
(活動開始2カ月前)

そして活動を行う前に腰痛予防活動に対するニーズを把握し、また活動内容を職員に知ってもらうために院内勉強会を開催しました。

ここではまず、以下の事を意識して話しました。

①腰痛に対する基礎的な知識をもってもらうこと
②活動の主旨と内容を知ってもらうこと
③ニーズを把握するアンケートに回答してもらうこと
(アンケートはニーズの把握だけではなく、簡単な問診表にもなっています)

そして勉強会終了後、アンケートを各部署に配布し集計した結果、多くの職員が腰痛予防活に参加をしてみたいという結果になりました。

「腰痛予防へのニーズあり!」ということで、いよいよ活動開始の時がきました。

いま振り返るとここまで話を進めてくるのが、一番大変だったような気がします。

5カ月間の活動経過

評価班

アンケートによる問診に加え、活動に参加を希望しているスタッフを対象に、個別に姿勢タイプ、痛みの部位や強さ、姿勢による痛みの変化・FFDなどの事前評価を実施しました。

メンバー1人当たり3~4人を評価する形で、計画的に進めることができました。また活動を行ったことによる効果判定ができるように、活動終了後にも同様の評価を実施し、データの作成に大変貢献してくれました。

エクササイズ班

まず、姿勢タイプ別のストレッチ、体幹のインナーマッスルを強化する筋力トレーニング、股関節の可動性を出すエクササイズのプログラム作成してくれました。

作成したプログラムを基に、月2回、昼休憩の時間を利用して「腰痛体操教室」を開催しました。エクササイズの方法の示し方、会場の手配・設営などは手作りではありましたが、丁寧に考えて実践してくれていました。

またエクササイズ動画の作成も行い、広報班が作ったHPにアップし、自宅でも正しいエクササイズ方法を確認することができるようにしました。

ただとても残念だったのが、ニーズから予測していた程に人が集まらなかったことです。1回の教室につき、多い時で10名、少ない時は3~4人という回もありました。

介助技法班

最初に医療・介護現場での腰痛発生に関して簡単な講義を行い、正しい介助方法の重要性を伝えました。「腰痛が発生しやすいのは午前中」といった豆知識も織り交ぜつつ、とても面白いものになっていました。

その後、月2回、昼休憩の時間を利用して「介助方法教室」をリハ室にて開催し、起居動作、立ち上がり、移乗動作を中心に実技形式で指導にあたりました。

またエクササイズ班と同様に動画をHPにアップし、介助方法を確認できるようにしました。

しかしここでも、慢性的な「人数が集まらない病」が問題となりました。特に介助方法教室の方が深刻な状況でした。

広報班

広報班ではまず、本活動をPRするリーフレットの作成から開始しました。

そして毎月開催する各教室のチラシ、腰痛に関するコラムや活動記録が掲載された月報も作成して院内に掲示をしました。また無料のHP作成ツールを使い、各班が作成した動画もアップしました。

しかし様々な方法でアピールを行ったのですが、目に見える集客効果は感じられませんでした。そのような状況だったので、活動の認知度の低さを痛感し、作業環境をチェックする「院内ラウンド」は行っても上手くいかないだろうとの判断で止む無く中止としました。

活動を終えて

メンバーの努力により、予定通り5か月間にわたり腰痛予防活動を行うことができました。

集計で得られたデータをまとめますと、参加者は「活動に参加したい」と回答していたスタッフの内、実際に参加してくれたのは2割にも満たない人数でした。

しかし、教室への参加の有無に関わらず、継続的に運動を続けていた職員の腰痛は軽減しているというデータはとれました。(サンプルが少ないのと、本記事は学術的なものではないので、詳細は割愛させて頂きます)

また参加してくれた職員からは、とても高い満足度を得られていました。

総括

集計結果より、教室に参加できなかった理由としては「教室の開催時間が参加しにくい」というものがほとんどで、昼休憩の時間ではメインターゲットであるナース、ケアワーカー、事務職は交代で休憩を取っていたり、午前中の業務の後処理を行っていることが多く、参加が難しいという状況がありました。

催側であるリハビリ科では休憩時間を利用して教室を開催しなければならなかったので、結果的にメインターゲットを受け入れられる環境が整いにくかったのが、参加者が少なかった大きな要因だったと考えられます。

職員それぞれの働き方があるので、「教室」という場所に来てもらうのは、特に医療機関では難しいのではないかと今回の活動を通して強く感じました。

ただ、継続的に運動を続けられた職員は腰痛が減っているというデータが出ているので、今回の腰痛予防活動の運動習慣を維持するような働きかけが、直接的ではないにしろ、職員の運動への関心を促せていたのではないかと考えています。

腰痛予防に限らず、同じような院内のヘルスケアに資する活動において一定の効果を出すためには、病院の通常業務の中にヘルスケアの考え方を落とし込んでいく必要があるかと思います。(例えば、各部署の朝礼で体操するなど)

そしてそれには病院の上層部の理解が必要です。

逆に言うと、理解が得られ、院内全体に向けてトップダウン的な指示を出すことができれば、ほぼ目的の半分以上は達成していることになると思います。この点は次の活動の機会の時の反省点として胸に刻みました。

今回の活動は思っていたような成果は得られませんでしたが、やられっ放しではありません!

実は活動終了後に活動報告書を提出しまして、上層部からの回答は「有意義な活動」ということで評価されたのです。そのため今年度の企業健診で何らかの形でリハビリ科とコラボしてみようという話がでてきています。

半年以上にもわたるプロジェクトを進めていくことは、様々な考えをめぐらせ、メンバーに伝え、説得や交渉をし、また話し合って、そして出来上がったものをいろいろな形で表現する達成感を私に経験させてくれました。

記事を読まれている方の中で、同じような活動をやろうと考えている方に参考になったかどうかは甚だ疑問ではありますが、これだけは言えます。

「自分で考えてやろうと思った事をやり遂げた経験は今後も生きる!」

これからもチャレンジの心は忘れないようにがんばります!!

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