コンプライアンスとアドヒアランス

リハビリ治療を進めていく上で、治療方針・方法に関する患者の理解は必要不可欠です。そして積極的に治療に関わってもらうために、コンプライアンスアドヒアランスの向上を促すようなコミュニケーションスキルや治療技術が大切になってきます。

コンプライアンスとは?

コンプライアンスは直訳では「法令順守」という意味ですが、医療業界では「服薬遵守」という意味合いで使用されることが多いようです。つまり「医者から処方された薬を用法・用量をきちんと守って飲んでいるか」ということになります。

リハビリ治療におきかえると、「セラピストから自宅で行うように言われた自主トレメニューを方法・負荷量を守って行う」などがこれに当たります。

アドヒアランスとは?

一方アドヒアランスとは、「患者が積極的に治療方針の決定に参加し、自ら主体的に治療を受けること」とされています。

つまり受動的に治療方針を受け入れて、それを忠実に実施するコンプライアンスと、能動的に治療方針の決定・参加に関わっていくアドヒアランスには違いがあります。

アドヒアランスはコンプライアンスの進化版と表現されることもあり、積極的に治療に関わった方が、より治療効果は高いといわれています。

リハビリとアドヒアランス

そしてリハビリ治療においても、患者さんのやる気を引き出して、治療に積極的に参加してもらうことは、リハビリの成否に関わってくることは言うまでもないでしょう。

そこで患者さんのアドヒアランスを高めて積極的な治療への参加を促すために、ヘルスリテラシーShared Decision Making どの考え方が必要になってきます。

詳細はこちらから

理学療法士とヘルスリテラシー
理学療法士とShared Decision Making

健康行動理論

アドヒアランスの向上に関して、特に患者側への働きかけの方法として、健康行動理論というものがあります。健康に対する人間の行動変容やその維持を理論的にまとめたもので、実際に患者さんのやる気を引き出すヒントを与えてくれます。以下にいくつかまとめてみました。

健康信念モデル

健康信念モデルとは人が健康に良いとされる行動をとるまでのプロセスを簡略化して表したものになります。それは以下のようなものになります。

①健康面で、このままでは病気や合併症になる可能性が高いという「罹患性」を感じ、その結果が重大なものであるという「重大性」感じ、これら2つを合わせた「脅威」を自分事として捉えて「マズいな」と感じること。

②「脅威」を減らすことができる行動を取った時に、その行動がもたらす「プラス面」と「マイナス面」を天秤にかけてプラス面の方がより大きいと感じた時にその行動をとるとされています。

③「脅威」に影響する他の因子として、病気の症状を感じたり、周りからのアドバイス、マスメディアからの情報、家族・友人が実際に病気になるなどの「行動のきっかけ」があります。

「医療・保健スタッフのための 健康行動理論の基礎」より (一部改変)

<健康信念モデルを利用した働きかけとして>

① ある程度の「脅威」を感じてもらうように伝えること
② 行動の「プラス面」を強調すること
③ 本人にとっての行動の「マイナス面」をできるだけ減らすこと
④ 「行動のきっかけ」についても留意すること

自己効力感

自己効力感(セルフ・エフィカシー)とは、人はその行動をとると自分にとって好ましい結果につながると期待し(結果期待)さらにその行動を上手くやることができるという自信(自己効力感)がある時に、その行動をとる可能性が高くなるという考え方です。


「医療・保健スタッフのための 健康行動理論の基礎」より (一部改変)


そして、その行動を上手くやる事ができる自信(自己効力感)は、以下の4つから生まれるとされています。

己の成功体験:過去に同じか、または似たような行動を上手くやることができた経験があること(最も効果あり)

②代理的経験:たとえ自分はその行動をやったことが無くても、人がその行動を上手くやるのを見て自分もやれそうだと思うこと(次に効果あり)

③言語的説得:自分はその行動を上手くやる自信がそれほどなくても、人から「あなたならできる」と言われること

③生理的・情動的状態:その行動をすることで生理的状態や感情面で変化が起きること

<自己効力感を利用した働きかけとして>

① 行動をとると、望ましい結果につながると期待してもらうこと(結果期待への考慮)
② 自己効力感の4つの情報源をもとに、その行動に対する自己効力感を高めてもらうこと

まとめ

アドヒアランスについて、その内容と向上させる方法をまとめてみました。

アドヒアランスを向上させて、積極的なリハビリ治療をしていくには、先に述べた患者(利用者)のヘルスリテラシー、セラピスト側の Shared Decision Making による治療方針の決定と共有がとても重要になってきます。

しかし、全てをこれらの考え方に当てはめて進めるのは難しいかと思います。

ただ例えば、患者さんと今後の生活やリハビリ内容について話し合う時に、「患者さんのニーズやバックグラウンドにあわせた根拠のある内容や方法」「分かりやすく丁寧に説明して一緒に決めていく」ということは最低限できるはずです。

その際に少しでも健康行動理論やヘルスリテラシー、Shared Decision Making についての知識があれば提案できる幅もグッと広がるはずです。

ヘルスコミュニケーションスキルは、結果が求められる時代のセラピストにとって必要不可欠なものになっています。

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