腰痛とストレス ー痛みに強い脳を作ろう!ー

健康寿命 腰痛予防 メンタル

以前の記事で、腰痛治療のグローバルスタンダードにおいて腰痛の転機には心理社会的な要因が大きく関わると紹介しました。慢性化してしまう腰痛にはメンタルの問題が根深く関わっていることになります。

逆にそうしたメンタルの面でのリスクを理解し、日頃から腰痛に対しての心構えをしておくことで、たとえ腰痛が発生してしまったとしても症状の軽減や再発を予防することができます。

心理社会的なリスクがどのように腰痛を慢性化させてしまうのか?
予防や対処法は?

今回は「病は気から」という格言を腰痛におきかえて、これらの疑問にお答えしていきます。

イエローフラッグ

イエローフラッグは心理社会的リスクファクターといえるもので、腰痛発症に深く関わり、腰痛の慢性化、職場復帰の遅延化、再発率を高めるといわれています。

ただし残念ながら、急性腰痛に対しては、イエローフラッグへの適切な介入が腰痛軽減につながるというエビデンスは現在の所ありません。腰痛予防や慢性化してしまった腰痛に対する介入でこうした管理が重要となります。

イエローフラッグの例としては、腰痛についての不適切な態度と考え方(例えば、腰痛は有害で、重度の機能障害を招く可能性があるという考え方、積極的な治療参加が有効という考え方ではなく、受動的治療への大きな期待)、恐怖回避行動または活動性の低下情動的問題(抑うつ、不安、ストレス、気分障害の傾向および社会的交流の離脱など)があります。

イエローフラッグの評価

問診

イエローフラッグの兆候を見極める方法で一番重要なのは、問診です。病歴・疼痛部位・性状・病的な神経兆候を細かく聞いていきます。

その際に動作や姿勢と腰痛に一致が見られなかったり、痛みが長引いていたり、痛みを誇張して表現していたり、簡単な動きのテストで一致しない強い痛みを訴える場合は、イエローフラッグに該当する可能性が高いです。

また抑うつと共に身体化兆候(めまい、頭痛、動悸、下痢、便秘などの症状)が見られる場合もリスクが高まるといわれています。

スクリーニングツール(Keele STarT Back)

Keele STarT(Subgrouping for Targeted Treatment)Backは英国で開発されたスクリーニングツールで、心理社会的リスクを評価するものになります。

問診でイエローフラッグの影響がありそうだと判断したら、このスクリーニングツールを実施すればさらに詳細な情報を得ることができます。現在、日本語版が作成されており、判断基準なども含めてインターネット上でも公開されています。

https://www.tyojyu.or.jp/kankoubutsu
/gyoseki/pdf/10h27gyosekisyu.pdf

イエローフラッグ腰痛の対処法
病は気からの実践

Fear-Avoidance-Model

では、イエローフラッグを確認できたとして、腰痛が慢性化しないためにはどのような対応が必要なのでしょうか?

ここで押さえておきたい考え方として「Fear-Avoidance-Model」というものがあります。

これは人間が痛みを感じた時にとる、心理的な行動や周囲からの影響が、その痛みの帰結に影響するという考え方です。慢性痛に苦しむ方への介入の際に有効だとされています。(下図)

例えば、ぎっくり腰などで痛みの経験をした後に、恐怖回避思考を強めるような発言や間違った情報を与えてしまうと痛みに対する不安や恐怖感が増大し、慢性腰痛が繰り返し起こる負のループに陥ってしまいます。

一方、腰痛に対する正しい知識や励ましがあれば、不安や恐怖感は薄れ、痛みは軽快・回復しやすくなります。

対応としては、痛みに苦しんでいる方への理解や共感の気持ちをまず伝えます。少しオーバー気味に態度で示すぐらいでもいいそうです。

そして過度に痛みを恐れず、仕事や家事などを維持するほうが、腰痛に対して効果的だというエビデンスがあることを伝えます。

例えば「世界共通の腰痛診療のスタンダードでは、腰痛が起こった場合は過度の安静は避け、痛みの範囲内で動いた方が良いとされています。つまり、普段通りの活動をしていた方がその後の経過が良いということがわかっています。」などと説明することが推奨されます。

また、腰痛の画像診断は予後判定に有効ではないため、脊柱の病変があったとしても、それを強調した説明で不安や恐怖を増張させるのは避けるべきです。

認知行動療法

そして、ストレスを軽減していくための具体的なメンタルヘルスの対処法を伝えていきます。この際に、日常のストレスに対処する方法として効果的だとされている、認知行動療法を用いるケースが多いです。その中でいくつかの方法をご紹介します。

認知モデル

何か出来事があった時に、誰にでも瞬間的に浮かぶ考えやイメージなどの「認知」があります。これは「自動思考」と呼ばれており、「自動思考」が生まれることによって、いろいろな「感情」が起こります。

例えば、「飲み会に行ったけど、目の前の先輩は私と話をしてくれない」という場面があるとします。

この時に起こる「自動思考」「私のことが嫌いなのかな」
これによって生じる「感情」「悲しみ」となります。

他の「自動思考」としては「少しぐらい話してもいいじゃないか」
これによって生じる「感情」「怒り」
といったような「自動思考」=「認知」で起こる「感情」の例が挙げられます。

すなわち自動的に起こる「認知」によって、「感情」が生まれているということです。

ここで重要なのは「感情」のコントロールはできないが、とらえ方である「認知」はコントロールできるということです。

上記のような場面でも
「仕事が大変そうだから疲れているのかな」
「お酒に弱くて気分が悪いのかもしれない」

このような「認知」によって生じる「感情」は
「気づかい」
「いたわり」

といったものになり、ネガティブな感情を変換する方法になります。
このような考え方を会話の中で取り入れて、考え方を変換させるトレーニングしていきます。

日記

また認知モデルの考え方をもとに自主トレーニングとして日記をつけてもらうことも有効です。日記の書き方としては、以下3点を書きます。

・今日の出来事をシンプルに書く。(無理なくやれる範囲で書く)
・そこで感じたこと、考えたことを書く。
・3日後に見直して、感じたことや考え方を振り返る。

このように、ある出来事に対して感情を書くことで、自分の認知パターンがわかってきます。さらに、あとで見直すと自分の考え方について冷静に客観視できます。

見直すときは、自分の認知のしがらみもあり客観視が難しいときもあるかと思います。そんなときは自分にとって大切な人(友人、家族)が同じ状況だったら自分はどんなアドバイスをするかという視点で振り返ると効果的です。

まとめ

心理社会的リスクであるイエローフラッグが原因で慢性化してしまった腰痛とその対処法について解説しました。

病院やクリニックなどで対応する患者さんは、少なからずこうした悩みを抱えていると思います。そうしたサインを見落とさずに、理解と共感、正確な知識や認知と感情のコントロールの方法の提示が大切です。

提示の仕方はある程度トレーニングが必要だと思います。自分もまだまだなので、これからも精進していきたいと思っています。

なお、ここで取り上げた認知行動療法に関しては、ほんの一部に過ぎませんので、詳しく学びたい方は正書を参照してください。

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